「敬老の日」や「秋分の日」を含めた2020年9月の4連休では、久しぶりに各地で渋滞が発生するなどいよいよ人の動きが活発になってきたことを知らせるニュースが飛び交っていました。
まだまだ新型コロナウイルスの拡散防止には予断を許さない情勢が続いてはいるものの、このような現象は、にわかに活気づきつつある転職市場の勢いにも拍車をかけ始めているようです。
こんにちは、こじのびです。
このような状況の中、先日こちらの記事で「コロナショックに弱い」企業の特徴をいくつか取り上げさせていただきましたが、その中でご紹介させていただいた「コロナショックに弱い企業②:在庫が多い」という内容について以下のようなご質問をいただきました。


在庫が「悪」にもなるし「利益の源泉」にもなるというのはどういうことですか?

説明が足りておらず申し訳ありません。
こちらは少しだけ「会計」の知識や考え方を含んだ内容となっていましたので、改めてこちらの記事で説明させていただきますね。
ということで、今回は在庫が利益に与える影響について会計の基礎的な知識をもとにご紹介させていただきます。
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目次
在庫ビジネスとは
世の中のビジネスを大別すると、「在庫を持つビジネスモデル」と「在庫を持たないビジネスモデル」の2つがあります。
「在庫をもたないビジネスモデル」とは、コンサルティングやマッチングビジネス・教育事業・受注生産販売などがありますが、概ね”無形”の商品やサービスを提供することによって利益を得るビジネスモデルのことです。
一方で、「在庫を持つビジネスモデル」とは、概ね”有形”の商品やサービスを提供することによって利益を得るビジネスモデルのことで、在庫をもとに売上を獲得し、そこから原価を差し引くことで利益を得るモデルのことです。
期首在庫と期末在庫
早速会計上のお話になりますが、在庫は在庫でも、年度や月次などの会計期間の算出時期によって「在庫」を「期首在庫」や「期末在庫」という名称で区別しています。
期首在庫
例えば、2021年1月に在庫ビジネスの新年度をスタートさせるとします。このビジネスでは在庫を販売することによって売上を得ることになりますが、2020年12月以前に何らかの経済活動がありその時期の在庫を売上獲得の元手にする場合、この在庫を原価ベースで換算した金額をその会計期間の始まりの在庫として「期首在庫」と呼びます。
期末在庫
先ほどの例に合わせてご説明しますと、ある在庫ビジネスを展開している企業が2021年の12月末に1年間の経済活動を終えて決算を行うとします。健全なビジネスという点では仕入れたものはすべて利益を乗せて売り切ることが理想ですが、仕入れと販売のタイミングは必ずしも一致せず、会計年度の最後に在庫が残ることは一般的です。この、会計年度の最後(ここでは2021年12月末)に残っている在庫のことを「期末在庫」と呼びます。
なお、企業がその会計期間後も継続して経済活動を展開する場合、この「期末在庫」がその企業の翌会計期間の「期首在庫」になります。
■決算期が12月末の企業の場合
2020年12月31日:2020年度の「期末在庫」
↓
2021年1月1日:2021年度の「期首在庫」
在庫ビジネスにおける”利益”とは
次に、在庫ビジネスにおける”利益”の算出方法についてお話します。
会計上では、一言に”利益”といっても以下のような種類があります。
①売上総利益(粗利)
②営業利益
③経常利益
④税引き前当期純利益
⑤当期純利益
①から⑤まで、番号順に必要な費用等を差し引いて次の利益を算出していき、企業に最終的に残る利益が⑤当期純利益となるのですが、この記事では「利益=①売上総利益(粗利)」という前提で説明を進めさせていただきます。
では、ここでいう”利益(①売上総利益)”はどのように計算するかはご存知でしょうか?
こちらはもちろんシンプルで、以下のような計算式で算出をします。
原価700円のTシャツを1,000円で販売すると、300円の利益が発生しますよね。
上記の計算をそのまま置き換えると、300円=1,000円ー700円という計算になります。
在庫ビジネスにおける売上原価とは
先ほどの例のように1点1点の仕入れ値(=売上原価)が把握できている場合はシンプルですが、例えば同じ商品を仕入れたとしてもその時々やロットにより値段が変わることもありますし、追加で購入する際に値段交渉で価格を安くしてもらうことなどは良くあります。
実際のビジネスでは様々な商品バリエーションがあり、取り扱い点数も多いためその企業が採択する会計ポリシーに基づいて「先入先出法」や「移動平均法」「最終仕入原価法」等の原価法に従って原価を算出しますが、これらによって計算された原価に個数をかけることで期末の在庫金額を確定させます。
そして、会計上の「売上原価」は前期から繰り越した在庫である期首在庫(①)とその会計期間中に仕入れをした当期仕入高(②)と先ほど算出した期末在庫(④)をもとに算出をすることになります。
月末や決算月になると

「棚卸」をして在庫を確定させてもらえないと、会計が締まらないですよ。
というような会話をお聞きになられた方も多いと思いますが、このような会計処理が背景になっています。期末の在庫が確定しないと売上原価(③)が確定しないのですね。
そして、その会計期間内の売上高(⑤)からこの売上原価(③)を差し引きすることにより確定するのが利益(⑥)なのです。
在庫ビジネスに携わる方は是非、上記の構造を会計の基礎知識として把握しておきましょう。
評価減とは
在庫は本来、仕入れた時の値段よりも高い市場価値があり、その差額が利益となるのですが、必ずしもその価値が維持できるものばかりであるとは限りません。
災害などの外的要因で商品の原材料が損傷した場合などはもちろんのこと、流行が過ぎ需要が変わってしまった場合などはもはや今までの価格で販売することが難しくなるでしょう。
この状態が分かっていながら新しい決算年度にそのマイナスの要素を持ち越すことは経営上健全とは言えません。
このような場合、会計上の一定のルールに従ってその在庫の帳簿上の価値を下げることができます。これを「評価減」といい、その処理によって発生する損失を「評価損」といいます。
運送の途中や店頭での在庫の紛失・破損などによってこのような評価減をした結果、期末の在庫が当初想定していたよりも少なくなることがあります。
この在庫の減少がどのように会計に影響を与えるのかというと、先ほどご紹介した以下の計算式からも分かるように「売上原価の増加」です。
上の図からもお分かりになるように、同じ売上高でも期末在庫の金額が小さく(④→④’)なれば、売上原価が大きく(③→③’)なり、利益が小さく(⑥→⑥’)なることになります。
どれだけ順調に新しい商品を仕入れて売上と利益を確保していたとしても、流行やトレンドの変化によって手元にある在庫の価値が急落してしまうと、たちまち利益を圧縮してしまうどころが、その在庫を処分するために必要な費用が発生してしまいます。
「在庫」とは、実際に販売をした実績がなかったとしても、その価値をどう見るかによって利益を大きく左右させてしまうとてもレバレッジが効いてしまう存在なのです。
在庫は”悪”か”利益の源泉”か?
在庫ビジネスは手元に準備した「在庫」をもとに売上を獲得して利益を生み出します。そのため、しっかりと売上目標に見合った「在庫」を確保しておく必要があることは言うまでもありません。
どれだけビジネスチャンスやニーズがあったとしても、その元手となる「在庫」がなければビジネスは成立しませんし、そのスケールを大きくさせることはできません。
しかし、「利益の源泉」とみなしてとにかく「在庫」を増やせばOKかというと、その考え方は危険です。仕入のために必要な資金が必要となりますし、その「在庫」を元に獲得できる売上や利益はあくまでも”期待値”の段階でしかないからです。
先述しましたように、その在庫は手元の資金を奪うどころか、時として外的な要因によってその価値を失ってしまうこともあるのです。
このバランスを見極めながら適正に管理をしていく、在庫ビジネスにはこのような手腕が求められるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
在庫ビジネスの基本は「安く仕入れて高く売る」ではありますが、これが成立するためには、その商品にニーズがあり、仕入れた商品に適正な価値があるということが大前提となります。
昨今のような変化の大きな世の中では、つい先日まで人気があったものがまったく見向きもされなくなってしまうことは良くあることです。
時の流れとモノの見極めに加えて「会計の知識」を持つことは非常に重要な要素です。是非この記事を機会に会計知識を深めてみてください。
この記事が皆さんの素晴らしい起業や転職のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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